11.16連続講演 開催報告

11.16連続講演 電力システム改革のゆくえVol.3
「わが家に電力自由化がやってくる!」終了しました
(第8回 西武環境保全活動助成事業)
 
2014. 11.16 (日) 14:00〜16:30 東京・JR国分寺駅ビル 国分寺LホールAホール 
50名の参加者で、会場の国分寺Lホールはほぼ満員の盛況でした!以下に内容をまとめてご報告いたします。

プログラム1 講演「電力自由化の課題と消費者の果たす役割」
船津寛和さん(コンシューマネット・ジャパン研究員)(1時間15分)
電力自由化の過程は大変複雑で多くの論点がありますが、船津さんは充実した資料をもとに丁寧に解説してくださいました。ポイントをいくつかご紹介します。

・電力システム改革を、消費者に役立つ「一言」で表すと、
 <目的>電力小売り自由化 → 電力会社を選べます
 <手段>広域運用期間 → 遠くから電力を融通できて、電力供給が安定します
 <手段>発送電分離 → 競争が促進されます
・現状では東電など全国10社の電力会社が、発電、送配電、小売りまで一貫して担っている。政府・経産省の電力システム改革工程表では、今後、発電部門と小売部門が分かれて自由化され、その次に送配電部門が法的分離されるが、社会インフラとして中立性・公平性の確保のため、規制されることになる。
・ドイツなど電力自由化先進国で起こったことは、電力会社の巨大・寡占化、多角化(電力+ガス+オイル等)、外資参入。電力料金は上がる場合も下がる場合もあり、小売事業者や料金メニューが増え、小売事業者倒産などの淘汰が起こった一方、市民電力会社が設立され、再生可能エネルギーの料金メニューが増加。
・自由化後、消費者が正しく選択するためには、充分な情報開示が必要。ドイツのエネルギー事業法では、電源構成(原子力、石炭、再エネ等)、環境負荷(CO2、放射性廃棄物排出量)などを消費者に情報提供する義務を課している。
・消費者による選択を支援するためには、まず電力会社が選べるようになったことを普及啓発し、選択のためのガイドラインの提示、比較サイト(事業者名、料金メニュー、環境性等)の整備、優良事業者のラベリングなどを進める必要がある。
・ただし三段階料金制度(電気使用量が多いほど料金単価が高くなる、日本特有の制度)は、省エネ、低所得者層保護のため、自由化されても維持すべきではないか。
・現在の電気事業法は供給側の視点に立ち、電力会社が消費者を保護するという一方的な関係だが、今後は市民も発電・節電することにより事業者と双方向的な関係を結ぶ。市民が起点となる「エネルギー基本法」が求められる。
・ドイツの再エネ発電設備の約7割が地域の出資(個人、農家、中小企業所有等)で、多様なエネルギー協同組合も増加し、コミュニティパワーが伸びている。
・今、地域住民として可能なことは、自治体が(東電等からではなく)新電力から買電入札を行うよう、また発電所を所有する自治体に(東電等との随意契約をやめ)売電入札を行うよう働きかけること。
その他、FIT制度(再エネ事業振興のために、その電力を一定期間、同じ価格で買い取る制度)をめぐるいくつかの問題も取り上げられました。

●講師プロフィール●
船津寛和(ふなつ ひろかず)
コンシューマネットジャパン研究員。
気候変動・温暖化防止のため、炭素税や排出量取引、固定価格買取制度などを研究、政策提言を行う。研究対象は再生可能エネルギー、省エネ、電力システム改革。環境教育やESD(持続可能な開発のための教育)が原点。
プログラム2 報告「市民電力の実力」
都甲公子さんNPOこだいらソーラー理事長)(40分)
 こだいらソーラー設立の経緯と目的、全国各地に市民電力が誕生し、昨年には市民電力連絡会が発足、今年11月の首都圏市民電力のつどいも100名参加で盛り上がったこと、小水力発電によって山間部の地域おこしが成功した例(岐阜県郡上市白鳥町石徹白地区)など、力強く話して頂きました。
 さらに、電力自由化により市民が電力を選べるようになるためには、供給してくれる新電力(PPS)、再エネの電源、再エネを選ぶ消費者が必要であること、FIT(固定価格買取制度)は再エネの普及を大きく後押ししてきたが、設備認定容量と実際の稼働量にはギャップがあるので、現在問題となっている電力会社の接続保留は行き過ぎであることを指摘されました。こうした問題を解決するには、分断された送電網を広域運用できるようにし、再エネの優先接続・優先供給を徹底すること(日本は6%が限界というが、ドイツでは風力と太陽光で50%以上を記録)、電力会社が恣意的に決めている系統(送電網)運用を、第三者的立場での公平なルールに改めることが必要だと訴えました。

●報告者 プロフィール●
都甲公子 (とこう きみこ)
市民の政治グループ東京・生活者ネットワークの政策スタッフとして、環境エネルギー政策をつくる傍ら、自ら実践をと1998年自宅の屋根に太陽光発電を設置。太陽光発電モニターの自主グループCELCを設立、以来計測活動を継続し、新エネルギー財団の新エネ賞を受賞。さらに広げてユーザ—の全国組織である太陽光発電所ネットワーク設立に参加。3.11後、地域のエネルギーシフトをめざす「こだいらソーラー」を立ち上げ、理事長として市民共発電所づくりに取り組む。また、市民発のエネルギー事業を志向する人々のネットワークとして「市民電力連絡会」の設立にも加わり、運営委員を務める。

 講師のお二人には数多くの質問が寄せられ、関心の高さと、問題の複雑さから理解しきれない部分もあったことがわかりました。電力自由化の全体像、問題点を提示することはできたと思いますが、今後の啓発活動に反省点として生かしていきます。