電気事業法改正案についての疑問点と要請

電気事業法改正案についての疑問・要請
(電力システム改革市民委員会と共同作成) 2014.6.1


今国会の電気事業法改正案は衆議院を通過し、参議院で審議が始まろうとしています。
今国会では電力システム改革の第二段階である電力小売自由化をめぐる電事法改正が主眼となっていますが、まずは当初の目的通り、電気料金を抑制しながら電気事業者間の公正な競争を実現させることが必要です。
しかし、電力小売自由化は消費者の生活に直結する重要な問題であり、電力システム改革は事業者のみの改革ではなく、エネルギー消費の主体である消費者を保護する観点を取り入れた改革であるべきと私たちは考えます。消費者にどういうメリット、リスクがあるのか、個別具体的に政府に説明を求め、今後集会開催などを通してこの問題への関心を喚起していきたいと思います。

電気事業法改正によって、どのように発電事業への新規参入が促進され、小売自由化で消費者が真に選択しやすい環境が整えられるのか、疑問点と私たちの要請を以下にまとめました。


小売事業者が多様な消費者ニーズに対応する選択肢を提示し、各種のサービスを実現することが重要である。消費者が小売事業者の変更(切り替え)を容易かつ迅速にできるようにすることが重要であるが(例 インターネットの手続き)、その方法、費用負担、消費者情報の取り扱いについて、電事法改正案に記述がない。これについて同法に規定を設け、周辺制度を改革する必要があるのではないか。また、消費者が小売自由化に対応できるように啓発し、小売事業者を切り替えられるようにするには、どのような環境整備が必要と考えられるか。


各家庭への(スマート)電力メーター設置が始まっているが、改革後、送配電会社(送配電部門)が所有すると予想される(スマート)電力メーターを消費者に対して一方的に設置する体制を改める必要があるのではないか(例 無線か有線かの選択肢を残すなど)。


消費者はエコ電力メニュー、スマートメーターによる時間帯別料金メニューを選択できるようになるのか。節電や省エネの観点から時間帯別料金などのデマンドレスポンス料金メニューの導入を促す方策が必要ではないか(例 時間帯別料金メニューは、改正省エネ法ではなく電事法において規定すべきではないのか)。消費者にとって「有利な情報提供」をどのように確保するのか。


小売全面自由化の前後に、どのような電気料金の経過措置が予定されているのか。現行の三段階料金を残すべきではないか(7を参照)。


託送料(ネットワーク料金)については総括原価方式がとられると予想されるが、この料金算定については、公聴会開催や消費者庁との協議が必要ではないか。制度論としてきちんと準備されるべきではないか(例 個々の消費者への情報開示として、電気料金明細に基本料金、電気使用料、託送料等内訳を明記するよう規定すべきではないか)


料金を払わない消費者は電気の供給をカットされるが、一般送配電事業者に「最終保障供給契約」に基づく供給義務が課せられている根拠は何か。特別な事情のない消費者が小売事業者を選択しないまま、一般送配電事業者の「最終保障供給契約」にとどまることはあるのか。


低所得層や高齢者が高い料金メニューに残されないための方策をどうするか。これらの啓発活動や情報提供を事業者任せにせず、セイフティーネット(福祉施策)としてどう進めるのか。


以上のなかで電事法の射程外となっている項目について、「電力小売の表示に関する法律」「電力小売の消費者保護に関する法律」のような特別法を作ることはできないか。仮にそのような法または下位規範の制定が可能な場合、どのようなことをポイントに取り込むべきか。

電気事業法改正案新旧対照
http://www.meti.go.jp/press/2013/02/20140228002/20140228002-6.pdf